●高橋氏の使用3Dプリンタ
2015年~2016年 MakerBot Replicator 2 5th Generation
2016年 MakerBot Replicator Mini
2016年~2018年 AFINIA H480
伝統と革新~日本の伝統とデジタルファブリケーション~そのために必要となる3Dプリンタとは?
・私のしごと
5年前から、フリーランスとして「お茶」と「3D」をテーマに活動をしています。2つのキーワードを聞いてもピンとこない方も多いかと思いますが(笑)、どんな仕事をしているか尋ねられた時に、それぞれの内容について詳しく話しても伝わりにくいニッチな業界かも知れません。
フリーランスになる前は、2001年から3D CADのエンジニアとしてさまざまな企業向けに技術支援をしており、並行して趣味としてお茶について少しずつ知識を得ていきました。そんな中で2011年の震災を経験してこれからの自分の生き方について考えるようになり、企業や一部のマニアだけでなくより多くの人に広めていく活動をしたいと考え現在の活動をスタートしました。
・3Dプリンタとの出会い
3D CADのエンジニアとして働いている時に3Dプリンタの存在は知っていましたが、2000年代までは高価で導入する企業も少なく、なかなか実際に使用する機会がありませんでした。
その後2009年に3Dプリンタの基本特許の保護期間が終了し、低価格の3Dプリンタが発売されるようになり、2010年代に入ってからデジタルデータを活用したモノ作りが企業だけでなく個人でもできるようになってきました。
2013年からフリーランスとして活動をスタートしたのですが、個人向けに3D CADモデリングのワークショップを開催し、その延長として3Dプリンタを活用したモノづくりも提案しています。
▲ワークショップ~はじめての3Dモデリング~。(クリックで拡大) |
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個人的には「お茶」の活動にもつながる「3D」の活動をしたいと考えるようになり、2015年頃から2つの活動を融合したモノづくりに着手しました。
それは「日本の伝統」と「デジタルファブリケーション」を組み合わせたモノ作りで、デジタルデータを活用した茶道具の製作です。3D CADを使用して茶道具のデータを作成して3Dプリンタで出力し、それを漆塗りで仕上げて製品化しています(iichiにて販売中)。
https://www.iichi.com/shop/k_teas_lab/
▲ファブ茶道具「漆塗りの茶杓」。(クリックで拡大) |
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▲ファブ茶道具「漆塗りの棗~甲赤茶器~。(クリックで拡大)
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私が使っている3Dプリンタ
茶道具として仕上げる方法には2つあり、1つは木地に対する仕上げと同じで約30工程を経て何重にも塗り重ねたモノ、もう1つは薄く塗って積層痕を生かしたモノ。
個人向けの3Dプリンタは一般的な積層ピッチが0.2mmですが、最近では0.01mmなどハイエンドにも匹敵する3Dプリンタもあります。ただ、私が製作する茶道具には一般的な積層ピッチの0.2mmで十分でした。
その理由は先ほど説明したとおり、漆を何重にも塗り重ねるか、あえて積層痕を生かす2つの仕上げをしているからです。そして、仕上げの漆塗りの費用が高くなるため、なるべく安いFDM方式の3Dプリンタを使用しています。
なお、個人的には3Dプリンタを所有しておらず、必要な時にファブ施設で3Dプリンタを使用して出力していますので、これまでに主に使用した3Dプリンタについて使用感などコメントしていきたいと思います。
・「MakerBot Replicator 2 5th Generation」(2015年~2016年)
フリーランスになってから、初めて使用した3Dプリンタです。まだ茶道具の製作をする前で、当初は3D CADモデリングのワークショップで作成した3Dデータを出力していました。ノズルが詰まりやすかったり造形が途中で止まることがあるなどメンテナンスで苦労した点はありますが、造形サイズが大きく(252×199×150mm)、液晶パネルでのオペレーションは簡単で、内蔵カメラとアプリの連動など便利機能があって馴染みやすい機種でした。なお、対応フィラメントはPLAのみです。
▲MakerBot Replicator2 5th Generationの設定画面と出力物。(クリックで拡大) |
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▲MakerBot Replicator2 5th Generationで出力した様子。(クリックで拡大)
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・「MakerBot Replicator Mini」(2016年)
上記の3Dプリンタのミニサイズ版で機能としては同様ですが、造形サイズがかなり小さい(100×100×125mm)ため一発で製作可能なモノが限られることがネックですぐに使わなくなりました。
・「AFINIA H480」(2016年~2018年)
最近まで使っていた3Dプリンタで、セットアップの手間はかかるものの造形精度が高くかなり重宝していました。造形サイズは小さめ(130×130×130mm)ですが、これまでに製作してきた茶道具を造形するにはちょうど良いサイズでした。対応フィラメントはABSとPLAです。
▲AFINIA H480で出力した様子。(クリックで拡大) |
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・その他
最近注目している3Dプリンタは、Slaboの「MothMach」シリーズです。あるファブ施設で試してみたのですが、造形精度も高く音も静かで造形サイズも最小200mm~最大500mmまであり、今後製作したいと思っている大きめの茶道具の造形も一発で作ることができます。ただ、この3Dプリンタを使うことのできるファブ施設が首都圏にないようなので、そろそろ購入しなければならないかも(笑)。対応フィラメントはABSとPLAです。
・おわりに
フリーランスになってから、茶道具などいろいろな用途で使用してきた3Dプリンタ。今後も使い続けていくことになると思いますが、もっと自由に使うことのできる場所が欲しいところです。もちろん気に入った機種があれば個人的に購入しても良いと思いますが、試作や量産の数がそれほど多くないため正直に言うと所有するほどではありません。
また、1年ほど前からxR(AR、VR、MR)を活用したモノ作りについても提案をしており、xRデバイスを装着することでよりリアルに形状の大きさや外観などを確認することができるようになっています。このようなデバイスをモノ作りのプロセスに導入し、3Dデータの精度を高めてから3Dプリンタで出力するというモノ作りがこれからのトレンドになるかもしれません。
▲3D CADデータを活用1(ホロレンズ茶室+ファブ茶道具)。(クリックで拡大) |
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▲3D CADデータの活用2(ホロレンズ茶室+ファブ茶道具)。(クリックで拡大)
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そういった意味でも、デジタルデータを利活用したモノ作りには今後も3Dプリンタは必須だと思いますし、より利用者の幅が広がるのではないかと感じています。
次回は向山義正さんです。8月下旬掲載予定。
(2018年7月19日更新)
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