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3Dプリンタ、私の選んだ1台

このコラムでは、実際の3Dプリンタユーザーにご登場いただき、購入のきっかけ、導入時の苦労、トラブル、業務上での貢献度、導入の満足度、今後の課題やリクエストなどを語っていただく。ユーザーから次のユーザーにバトンを渡していただくリレー形式のユーザー事例となります。

 

 
 

3D Printer My Selection

第16
「開発や製造工程について
考えさせてくれた3Dプリンタ

前田耕一/おおたfab

およそ30年間 精密板金業の町工場を経営。その間熱溶解式3Dプリンタを共同開発し、その後FabLabを運営。ファブマスターを務める。また並行して商品開発も行っている。
おおたfab:  https://ot-fb.com/



 

●前田氏の主な使用3Dプリンタ
2013年~「DS1000」自社開発
2014年~「UP!plus2」
2015年~「NT100」自社開発
2016年~「PLUSA mk2」

・3Dデザインツール
Fusion360、Tinkercad、Sinplify3D(スライサー)など

・3Dプリンタを使えば割と簡単に改造ができる

初めまして「おおたfab」を運営している前田です。私はもともと工作機械関連の仕事を長年しておりました。そのため3Dプリンタを使う立場からでなく作る立場から、3Dプリンタとのお付き合いがスタートしました。

実際使い始めたところ、熱溶解式3Dプリンタは段取り変更にかかる時間が今まで使っていた工作機械に比べ、はるかに少なく、3Dのデータを起こしてしまえば今までの工作機械使って試作するより素早く作れることが実感できました。

それと同時に3Dプリンタを使ってつくるには、設計の考え方も変えることが大事なことにも気付きました。特に熱溶解式は、強度の方向性があるうえ、収縮がありますのでそれを低減させる形で設計することが、使える部品になるかどうかの鍵があります。
長所は設計完了から製作完了までの時間が短縮出来ること。肉抜きなどの部品の軽量化設計が簡単に出来ることなどです。型や治具を作りませんので、失敗したときのダメージが少ないです。

一方で、産業用に使っている事例が少ないので思っていた以上に問題が多く発生します。いまだに分からないことが多く失敗もします。でも速さとコストの低さでかなり補うことができますね。今の3Dプリンタ造形の私のテーマは、「市販の製品に、3Dプリンタによる造形物を混在させて使う」です。いくつか実際に作り使用している事例をご紹介いたします。

・ブラインド部品

まずはブラインドの部品 経年劣化によりブラインドをつなげていた部品が破損したので、作成しました。2年経ちますが、問題なく稼働しています。


▲補修前の使えなくなったブラインド。(クリックで拡大)
 
▲3Dプリンタで部品を作りブラインドを復活させた。(クリックで拡大)


▲3Dプリンタで作った部品。(クリックで拡大)
 

たったこれだけの部品でブラインドの修理ができました。他の部分は紫外線による劣化が起きそうもないので当分交換する必要がありません。 小さい部品です。造形するのに10分以内です。これだけのことですが、使える専用部品を3Dプリントすることにより探す手間が減らすことができました。

・イスのかさ上げ部品

これは椅子の取手につけたエラストマ(ポリエステル系の柔らかい素材)で作った椅子のかさ上げ部品です。これをイスに装着することにより、運営するオフィスの床清掃を自動掃除機のルンバに任せることができ、人件費の節約につながっております。これも作ってから1年以上経ちましたが、問題は起きておりません。


▲ルンバが椅子の下まで掃除。(クリックで拡大)
 
▲「PLUSA mk2」で椅子のクッションを造形。(クリックで拡大)

エラストマは層間密着がよく造形物が柔らかいので壊れにくいです。しかし、フィラメントが柔らかいためエクストルーダの送りの性能によりできない場合があります。“PLUSA mk2”は適正なデータであればほぼ失敗なく作ることができます。

・最後に

熱溶解式の3Dプリンタは安く手軽に使用できるので、今後も利用したいと思います。また価格の安さからコスト削減に大きな役割を果たす機械であると、3Dプリンタにかかわる前と認識が変わってまいりました。 これからも造形物を工業製品としてどうやって既存の製品と組み合わせて使っていくかを考えより使い勝手のよい製品を生み出したい思っています。

 

(2019年9月25日更新)

 

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