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マイディア3Dプリントライフ

pdweb.jpの姉妹オンラインメディアとして新たにスタートした3DCreators.jpに、隔月でコラム連載を行うこととなった。ひと月ごとに、pdweb.jpの「モバイルデザイン考」と交互に掲載されるわけだが、こちらのタイトルは「マイディア3Dプリントライフ」とした。

 

 
  My Dear 3D Printing LIFE

第1回
iPhone XケースのC4 Cactus化

大谷和利

テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。

 


●iPhone X用のケースをカスタマイズ

このコラムでは、普段からデジタルファブリケーションを楽しんでいる筆者が、3Dプリンタのあるライフスタイルを紹介するということが大きなテーマであり、モデリングやプリンティングに関する話題だけでなく、3Dプリンタでこんなものを作ったとか、3Dプリンタがあれば暮らしがこんな風に変わるという話をしていければと思っている。

初回の今回は、挨拶がわりに、最近カスタマイズしたiPhone X用のケースを採り上げてみよう。元々筆者は、ケースはつけない派なのだが、iPhone Xでは、ある製品を見かけたことで、どうしても手を加えてから日常的に使いたくなったのだ。
その訳は……。

シトロエン「C4 Cactus」というクルマ

まずはじめに少しだけ、筆者の愛車の話をしておこう。そうしないと話が見えてこないからだ。

筆者は小学校高学年の頃からフランスのシトロエンの車に惹かれ、実家でも独立してからも、シトロエンを乗り継いできた過去がある。

途中で、停滞期のアップルのように、シトロエンも凡庸な製品しか作れなくなった時代があり、その間はフォルクスワーゲンの初代New Beetleやルノーの初代Twingoに乗っていたりもしたが、シトロエンがC3 Pluriel(プルリエル)という5変化するボディを持つ製品を発表したときに、ちょうどiMacをリリースしたアップルのように復活の兆しを感じて、もう一度シトロエンに戻ってきた。

そしてC4 Cactus(カスタス)が登場すると、かつて乗っていた2CVを現代風に解釈したクルマだと感じて、買い換えたのである。

輸入元のシトロエン・ジャポンにとっては、先ごろ日本に導入された新型C3が本命で、C4 Cactusはつなぎ的な扱いだったため、わずか300台しか正規輸入されなかったが、運良く抽選に当たって入手できた。実は、pdweb.jpで「女子デザイナーの歩き方」を連載されている知人のデザイナー、片山典子さんのお宅でも、C4 Cactusに乗られている


写真1:2014年に、フランス本国で発表されたシトロエンのSUV、C4 Cactusは、車体の前後と側面に、軽度の衝撃を吸収するエアバンプと呼ばれるディテールを持つ大胆なスタイリングが特徴だ。(クリックで拡大)

写真2:インテリアは、旅行用のトランクをイメージしたグラブボックスや、3つのプッシュボタンで操作する機械式自動変速機、2つのLCDに集約されたメーター類など、シトロエンらしいアバンギャルドさで溢れている。 (クリックで拡大)


写真3:日本では種類が限られ、組み合わせも固定だが、本来は豊富なボディカラーとエアバンプカラーの組み合わせを楽しめる。ちなみに愛車は、ハローイエロー(黄色)のボディカラーにブラックのエアバンプだ。(クリックで拡大)


iPhone Xへの変更手続き中に目にしたケース

それで、去年の秋にiPhone Xを購入した際に、自宅近くのソフトバンクショップで手続きを待つ間に、ふと、目の前にあるソフトバンクセレクションというアクセサリ製品のカタログが目に入った。

何の気なしに手に取ると、その中にグッドデザイン賞を受賞したインボルというメーカーのiPhone Xケースの製品紹介があった。



写真4:ソフトバンクショップでの待ち時間に、置かれていたカタログを何気なく見たときに、このようなケースが目に入ってきた。 (クリックで拡大)


もちろん偶然の一致とは思うが、このケースが、まさにC4 Cactusを思わせるもので、特に黄色のものは、色合いまで含めて雰囲気の一致度が高い。そこで、iPhone Xにはこのケースを付けて使うと心に決めたのだった。ところが、普通はそこで終わるところだが、何かが物足りない。そう、エアバンプがないのだ。

というところで、3Dプリントの話につながるわけだが、ないものを思いついたときに、自宅で作れてしまうのが、3Dプリンタのメリットの1つである。さっそく、TinkerCADを使って、ケースの余白に合わせてエアバンプ(らしきもの)をデザインし、2度のテストプリントを経て完成させた。今回出力に用いた3DプリンタはDeezmakerの「Bukito」というキット製品で、フィラメントに柔軟性のあるフレキシブルなものを使ったので、実際にも多少の衝撃吸収性が期待できる。


写真5: 特にこのカラーのモデルは、色あいといい、斜めに入った黒い線のディテールといい、ハローイエローのC4 Cactusを想起させる。だが、足りないものがある。(クリックで拡大)

写真6:その足りないものを、TinkerCADでモデリングし、フレキシブル素材のフィラメントを使って3Dプリントすることにした。 (クリックで拡大)


写真7:そうしてでき上がったエアバンプ風のパーツを両面テープで先のケースに貼り付けて、C4 Cactus風のカスタマイズが完成。(クリックで拡大)



写真8:このケースの特徴は、背面の三角形の部分を折り曲げて起こすと、スタンドとして機能する点にある。実は以前に、これと似た機構のiPhone 7用ケースを自分でデザインして出力したことがあった。それもまた機会があれば、iPhone X用に設計し直して紹介したいと思う。(クリックで拡大)

写真9: (クリックで拡大)

今回は、このように単純なディテールの追加ではあったが、逆に言えば、ちょっとしたものでも簡単に3Dプリントして使うようになって初めて、3Dプリンタがライフスタイルの一部だといえるのではないだろうか。

個人的には、これからもそういった使い方も含めて、3Dプリンタを活用していきたいと思っている。


次回は3月中旬掲載予定です。
(2018年1月29日更新)


 

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