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3Dプリンタの明日を妄想する

本コラムでは3Dプリンタに関係する業界のオピニオンリーダーに、3Dプリンタの現在、未来を語っていただく。明日は誰にも分からない。だからこそ、夢や妄想が明日を創る原動力になる。毎回、次の著者をご指名していただくリレーコラムなので、さまざまな視点での3Dプリンタの妄想をお楽しみください。

 

 
 

Imagination for 3D Printer

第4
より良いキャラクター出力の
ための3つの期待

吉井 宏

イラストレーター、キャラクター/マスコットデザイナー。グラフィックデザイナーを経て1990年に独立後、多くの出版イラストを手がける。2003年頃から3D CGによるキャラクター制作を開始。アニメーションの他、アートトイやFRP彫刻など立体作品にも取り組む。代表作はNTTドコモのiコンシェル「ひつじのしつじくん」、Printemps Paris 150周年記念マスコット「Roseちゃん」、ショップジャパン「WOWくん」、アニメーション「ヤンス!ガンス!(MEAT OR DIE)」のキャラクター、SWAROVSKIのLovlotsシリーズ「HOOT, THE OWL」など。
http://www.yoshii.com/

 


●3Dプリンタで現実世界へ進出

作品や仕事で3Dプリンタの恩恵を受けているものの、ほんの入り口の見映えの良い部分をつまみ食いしてるだけという自覚はある。初期は「少量生産のレジンフィギュアを作って売る」ことが目的だったのだが、今はキャラクターやマスコットの仕事をする上で「手に取れるサンプル」や「デモンストレーション展示」の意味合いが大きくなっている。

ベタな言い方だが、それまで印刷物やディスプレイ内にしか存在できなかったものが、現実世界に取り出せるようになったのは、考えてみればスゴイことなのだ。

3Dプリンタはけっこう以前から利用している。2006年12月に話をいただいた3Dプリント体験のレポート仕事で、切削式とDimensionによる積層式を体験。現在3DツールはMODOを使っているが、まだこのときはZBrush+CINEMA 4Dによるポリゴンモデルだった。


写真1:2006年、ZBrush+CINEMA 4Dによるポリゴンモデル「TVDog」を出力。(クリックで拡大)

写真2:同じく2006年に出力した「KumaJiro」。(クリックで拡大)


写真1:CINEMA 4Dによる「TVDog」のレンダリング画面。(クリックで拡大)

写真2:「KumaJiro」のレンダリング画面。(クリックで拡大)


●感激はそこそこ

出力物を初めて手にした時はちょっと感激した。いや、空気を読んでちょっと大げさに喜んだかもしれない。実のところ、それほど感動していない自分に驚いたほどだった。3D CGでは制作中に散々グルグル回して見てるから、目の前にそのカタチが出現しても驚きはない。

3D CGデータは「生モノ」なのに、出力されたら「過去の結果」だし、樹脂の塊として固定されてしまった残念なモノ、という変な感覚さえあった。

その後数個の出力を経て、3Dプリンタそのものには興味を失った。出力できることを確認できれば、「出力するに足る作品を作りたい」だけだ。「3Dプリンタは目的ではなく手段」という再確認。

とはいえ、色を塗ってピカピカに仕上げたフィギュアは話が別。トップコートを吹いて完成したときの感激を味わうため、やみくもに作り続けてしまうのだ。


●3Dプリンタ出力遍歴

2007年、PixologicのためにZBrushのノベルティ10種類のフィギュアを10点ずつ、計100点作成。このうち8種類が3Dプリンタ出力物を元に原型制作したもの。表面を仕上げるのが大変だったが、粘土ではなく3D CGで原型を作ることができるのは画期的だった。


2007年「ZBrushToys」。3Dプリンタの出力物を元に原型制作(クリックで拡大)
 

2009年には僕がデザインしたNTTドコモiコンシェル「ひつじのしつじくん」の発表イベントのために十数体のしつじくんを作成。ZPrinterで出力したものを元に原型を作成し、シリコーン型によるレジンキャスト複製したものに塗装した。


NTTドコモのキャラクター「ひつじのしつじくん」。(クリックで拡大)
 

2013年秋に3Dシステムズ本社から話をいただき、Cubifyのアーティストショップに僕のショップがオープン。ProJetのフルカラー出力物をていねいに磨いて仕上げたものが並んだ。素晴らしいクオリティだったのに、翌2014年1月に同社の方針変更でアーティストショップ全体がクローズしてしまい、ガッカリ。


3Dシステムズが運営していたアーティストショップ「Cubify」。(クリックで拡大)
 


その直後、幸運にも株式会社カブクからrinkakショップへのお誘いがあり、Cubifyの色付きモデル用データを元にラインナップを増やして現在も販売中。
https://www.rinkak.com/jp/shop/hiroshiyoshii

2014年には発泡スチロール切削を依頼して50×90cmの立体を6つ作った。表面をFRP処理して塗装。カッターナイフで削って作ったこともあるのだが、3D切削は形状に不満がなくて作業してて気がラクだった。


発泡スチロールで制作した大型立体。(クリックで拡大)

同じく大型立体。(クリックで拡大)


同じく大型立体。(クリックで拡大)

同じく大型立体。(クリックで拡大)


ヤマトマネキンの展示用チョコレートのために、光造形プリンタによる精密な原型を作った。これはとても楽しかった。食用には適さないとのことで残念ながら食べられなかったが。


光造形による「ヤマトマネキンチョコ」。(クリックで拡大)

「ヤマトマネキンチョコ」の原型。(クリックで拡大)

3Dプリンタ利用とはいえ、自分で制作・複製・塗装など全部行うのは楽しい反面、時間がかかりすぎる。ここ何年は仕事やプライベートで立体作品の必要があれば、(次回の本コラム執筆者の)織田隆治さんに丸ごと依頼してきた。自分で作るより上手いし早い。それで、立体制作の材料や道具などほとんど処分したのだが……。



織田隆治さんによる造形。(クリックで拡大)
 


●自前の3Dプリンタで作品制作

出力に非常に時間がかかることや失敗が多いことも知っていたので、自前で3Dプリンタを持つことにはあまり興味がなかった。データを渡して出力物を受け取れればそれでいい。ところが昨年秋、購入してしまったのだ。また立体制作に復帰。

周囲で3Dプリンタでいろいろやってる人が増えてきて、SNSで盛り上がってるのがうらやましかった。10年以上も3Dプリンタで作品制作してるのに「自分で出力したことがない」のがちょっと悔しかったし。

FLASHFORGE Finderという比較的リーズナブルなFDM方式の3Dプリンタを(前回本コラムの)福井信明さんに薦められて購入。まだ10作品(パーツ約40個)程度だが、大きなトラブルもなく出力できている。4段階の下から2番目の「標準品質」でも、それ以上の品質は必要ないくらいにキレイ。


最近導入したFLASHFORGEの3Dプリンタ「Finder」。(クリックで拡大)
 

現在、「出力物の表面を滑らかに仕上げて、色を塗る」という原始的なことにハマッている。「3Dプリンタ出力物を元に原型を作成し、シリコーン型でレジンキャスト複製、塗装」は今まで散々やってきたわけだが、フィギュアとして販売するつもりがないなら複製する意味はない。


「Finder」で出力した作品。(クリックで拡大)
 

3Dプリンタなのに一点物という矛盾。ただ、必要があれば何個でも出力して塗装してもかまわないわけだ。大変な複製作業をせずに済むのはありがたい。また、3Dプリンタだからこそできる方法として「3mmずつサイズを変えたものをそれぞれ1点だけ売る」もアリかもしれない。一点物と数量限定生産の中間のようなことができる。Edition No.1は100%サイズとし、No.2以降は1%ずつ小さくしていくとか。早く買うほど大きいものが手に入るという(笑)。


●これからの3Dプリンタに期待したいこと3つ

(1)「高速FDMプリンタ」

とにかく速くなってほしい。品質を上げると丸1日とか平気でかかってしまい、出かけられないのが困る。放っておけばいいんだろうけど、寝てる間の出力さえ僕的には不安で無理。2台使えばスピード2倍、10台で10倍って手もあって、プリンタが安いからやろうと思えば可能ではあるが……。

(2)「積層方向可変FDMプリンタ」
原理上、急角度ほど積層幅が狭く90度では最小。逆にプラットフォームに平行な部分は広くガタガタになってしまう。対策として、ガタガタになってほしくない部分優先で角度を変えたり分割出力している。全体または指定部分の積層幅が最小になるようプラットフォームの角度を変えたり回転するようにならないものかと。3軸プラットフォームというか。

(3)「高品質フルカラーツルツルプリンタ」
色付き3Dプリンタの出力物の品質がせめて市販のフィギュア程度になってくれたら、複製や製造をすっ飛ばしていきなり売り物にできそう。ただ、当たり前に高品質フィギュアが出力できてしまうと困る。現状、出力物を元に原型を作ったり型取りや複製、そして塗装やトップコートなどなど、それぞれに膨大なノウハウがあり、1つずつどうにかこなして初めて一定以上の品質の「作品」になる。

それが僕の価値の一部だったはずのに、そこをすっ飛ばされてしまうと僕はいったい何をやればいいのか(笑)。まあ、その辺が、3Dプリンタに出会った頃に思ったこと「出力できることは分かった。じゃあ、出力するに足る作品データ作りだ!」に立ち帰ることになるのかもしれない。



次回の執筆は織田隆治さんです。
(2018年4月16日更新)

 

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