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3Dプリンタの明日を妄想する

本コラムでは3Dプリンタに関係する業界のオピニオンリーダーに、3Dプリンタの現在、未来を語っていただく。明日は誰にも分からない。だからこそ、夢や妄想が明日を創る原動力になる。毎回、次の著者をご指名していただくリレーコラムなので、さまざまな視点での3Dプリンタの妄想をお楽しみください。

 

 
 

Imagination for 3D Printer

第27
これからの3Dプリンタには
「速い、安い、強い」を期待

大上竹彦/グラフィックデザイナー/デジタル原型師

GEAR DESIGN代表。グラフィックデザイナー/デジタル原型師。大阪芸術大学非常勤講師。サイン設計デザイン(看板のデザイン・設計・レイアウト)、建築グラフィック(建築の内外装を彩るデザイン)、建築CGパース(図面から建築の完成予想図を作成)、デジタル原型制作(プロダクトのモデリングからキャラクターのスケールフィギアや等身大フィギアその他のデジタル造形)、ZBrush講師(大阪芸術大学プロダクトデザインコースや社会人にZBrushの使い方などを教えてます)。
https://gear.myportfolio.com


 


●3Dプリンタとの出会い


私は昔から3D CGの映画やゲームにすごく興味があり、できればそのような仕事に携わりたいという気持ちがすごくありました。ですが、そのような仕事に携わる人はセンスの塊のような人で、それを生業に生計を立てれる人はその中でも選りすぐりのエリートだけだと思っていまして、自分にはそのようなセンスはないと思い、とてもその業界に飛び込む勇気はありませんでした。ですので趣味でCGを触るだけで、仕事にはしないでおこうと思っていました。

実際の仕事は看板など建築に携わる設計・デザインをしていたのですが、手描きで書いてた図面がAdobeのIllustratorにて作図になり、デザインではPhotoshopを使い、完成イメージではShade3Dを使い…と本職でもガンガンCGを使い始めていきました。このままいけば昔憧れていた3D CGの映画やゲームの仕事のお手伝いなどできるのではないかと夢をいだき、キャラクターモデリングを始めました。

ZBrushと言うスカルプト(彫刻)ソフトに出会い、楽しく学ぶと言うことが実現できました。毎日何かを作る! を目標に練習の日々を続けていたところ、ワンダーフェスティバルと言うイベントの存在を知りました。なんと自分の作ったCGを3Dプリントで出力してその商品に値段をつけて販売できるらしいです(主にキャラクターのフィギア関係をキット化して販売するイベントです)。なんと言う夢のイベントか! と思いさっそく出場する決心をしました。

ここで初めて3Dプリンタと向き合うことになります。当時3Dプリントはすごく高く、簡単には買えませんでした、出力してもフィギュアとして販売できるレベルに達しておりませんでした(積層痕が多く入ってガタガタでしたので…)。いろんな3Dプリンタを経験した後、結局DMMの3Dプリントサービスに結構な金額を払い出力してもらいました。

とりあえず全パーツは揃ったのですが、いくら高性能なDMMの3Dプリントでも売り物にするには、積層痕を消すためのヤスリがけが必要になります。さらにでき上がったのは原型と呼ばれるマスターで、それをベースにゴム型を作り、レジンで全パーツの複製をとり、パッケージング…。イベントに出る人は仕事をしながら裏でこの作業をしてます。超人! だと思いました。いろいろ苦難を乗り越えイベントには参加できたのですが、一連の作業を経て見直さなければいけない点がたくさん見つかりました。

●3Dモデリング

3Dモデリングの強化、これは頑張らなければいけないのですが、趣味ではなくちゃんと仕事として責任を持ってモデリングをすれば飛躍的に技術が伸びるのでは! と思い、商業のモデリングのお手伝いをいろいろさせていただきました。

その中でモニターの中のイメージと3Dプリントされたものを比べると、若干イメージが違うことがあります。画面のパースのパーセンテージなどを調整してもなかなかイメージと合わず結局は3Dプリントしてみての確認になります。

形状確認で外部に依頼してては納期や金額的にも合ってこなくなってきますので、自分で3Dプリンタを購入して、出力してはバランスを確認するようになりました。自分の事務所で手にとって確認できることでモデルの確認修正が捗るようになりました。

●建築と3Dプリンタ

仕事で建築に携わっておりますので、建築と3Dプリンタについて考えます。海外では大型の3Dプリンタで建物を作っちゃう! みたいなことがあるみたいですが、倉庫的なものではいいのですが、居住だとなんとなく心配な感じはします。ですが、日本でも3Dプリンタで安全な家をどんどん立てていける未来は夢があっていいと思います。子供の秘密基地なども簡単に作ってみたいです。

現状、建築模型(ミニチュア)などに3Dプリンタは使えそうですが、コスト面や納期を考えますと、直線物が多い建築ではまだ従来の作り方でスチレンボードを切った方が早くて安いので、部分的に作りにくい家具や曲面を含むものを3Dプリントし従来の作り方+3Dプリントが一番しっくり来るのではないでしょうか?

●仕事での3Dプリンタ活用

建築よりもプロダクト関連の方が3Dプリンタは活用してます。

・ミズノ様のコンセプトモデルをモデリング→3Dプリント。

・本コラム第6回執筆の株式会社久宝金属製作所古川様にミニチュアモデルを制作いただきました。そしてスムーズに承認をいただくことができました。

・本コラム第5回執筆のFULL DIMENSIONS STUDIO 織田様に等身大の3Dプリントと最終仕上げをしていただきました。この物件は3Dプリンタなくては実現できなかったと思います。皆様のご協力で非常に良いものができました。

左よりCGレンダリング→データ分割→3Dプリント。(クリックで拡大)



・ロイスエンタテインメント様ご依頼のクラスメソッド株式会社企業キャラクター。この物件は最終石膏フルカラー3Dプリント出力しました。CGの作品がそのまま商品になるのは驚きでした。ただ、石膏はあまり強度がないので、髪の毛の先端などが折れやすく細心の注意が必要です。



左がイメージ画、右が3Dモデリング。(クリックで拡大)


●3Dスキャンと3Dプリント

先日牡蠣のキャラクターをフィギュア化したのですが、殻の部分を高精度3Dスキャナーにてデータ化し牡蠣をモデリングした物と合成し3Dプリントして販売いたしました。3Dスキャンと3Dプリントはすごく相性の良い組み合わせで、この使い方には未来を感じました。


3Dプリンタ(クホリア)で出力されたキャラクター。(クリックで拡大)


左から3Dスキャン→CG→3Dプリント→商品化。(クリックで拡大)


●切削加工

岡山の安田工業株式会社様へ訪問いたしました。普段ワンダーフェスティバルなどで販売してるモデルを切削加工機で作っていただきました。髪の毛などの先端もピンピンに尖って、それでいて強度もありました。


CGとほぼ同じ精度で毛先まで強度がある。(クリックで拡大)


機械も見せていただいたのですが、大きな業務用冷蔵庫みたいでびっくりしました(Labonos)。
https://www.youtube.com/watch?v=GF807tMSBzw


冷蔵庫のような本体。(クリックで拡大)




隙間もなくピッタリはまる。(クリックで拡大)



初めての切削加工を見ることができて大変勉強になりました。この切削加工機は専門知識がなくても簡単に3Dデータを削り出すことができるそうです。でき上がった物の精度がすごいです。違う素材でもピッタリと吸い付くように噛み合います。

●3Dプリントの今後の期待!

私の事務所にも3DプリンタはFDMと光造形と1台ずつあるのですが、どちらもやはり出力時間がすごくかかります。あと出力した後のサポート取りがけっこう大変ですし、ゴミがけっこうな量出ます。夢としましては早く出力できて、サポートもサクっと取れて、出たゴミはリサイクル。材料費も安く! 切削機のような強度もあり健康に害のないもの!

といっぱい書いてしましましたが…3Dプリンタは年々進化を続けていますのでどんどん実現していくと思います。新しいプリンタが発表されるたびワクワクしますね。


次回の執筆は和田真一さんです。
(2020
年3月17日更新)

 

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