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3Dプリンタの明日を妄想する

本コラムでは3Dプリンタに関係する業界のオピニオンリーダーに、3Dプリンタの現在、未来を語っていただく。明日は誰にも分からない。だからこそ、夢や妄想が明日を創る原動力になる。毎回、次の著者をご指名していただくリレーコラムなので、さまざまな視点での3Dプリンタの妄想をお楽しみください。

 

 
 

Imagination for 3D Printer

第64
フィギュア製作を支えてくれる
相棒、3Dプリンタ

まさむね/フィギュア原型師

1998年生まれ、北海道出身。幼少期からプラモデルやものづくりが好きで、高校生の時に粘土でのフィギュア制作を始めフィギュア原型師の道を目指す。2018年冬にワンフェスにてディーラー M.M modelingとして活動開始。2021年大学卒業後は東京でフリーランスの原型師として現在活動中。
X(Twitter): @masamune_MHF


 

●フィギュア造形に目覚める

フィギュア造形を始めたのは高校生の頃でした。きっかけはゲームに登場するモンスターのフィギュアが欲しくて「商品化されないなら自分で作ってみよう!」と思ったのがきっかけでした。そこからスカルピーという造形専用の粘土があることを知り、4~5年ほどアナログでのフィギュア制作をしていました。


「邪龍」(2018年制作) 材料:スカルピー。新世代造形大賞2018年銅賞を受賞。(クリックで拡大)

「紅蓮の鳳凰」(2019年制作) 材料:スカルピー、石粉粘土。新世代造形大賞2019年金賞を受賞。(クリックで拡大)

●デジタル造形と3Dプリンタの導入

大学生の時に大阪芸術大学と海洋堂が主催する新世代造形大賞に参加した際、審査員の方に「フィギュア原型師を目指すのであれば、今後はデジタルでの制作も視野に入れるべき」とアドバイスをいただいたのがきっかけでした。そこからZBrushとAnycubic Photonを購入してデジタル造形を始めました。

当時はPCを使うこと自体あまり慣れていなかったので最初はかなり苦戦しました。アナログでは思い通りに作れていたものでもデジタルだと思うように造形ができず悩む日々……。ですがアナログにはないデジタル造形の楽しさがあり練習しているうちに少しずつ慣れていきました。


「剛腕のドラゴン」初めてモデルを完成させ出力した作品です。(クリックで拡大)

出力後彩色し、台座はスカルピーにて制作。(クリックで拡大)

ずっと画面の中のデータで作っていた物が実物として出力された時は感動しました。最初は小さなパーツの出力をしていましたが、より大きなサイズの出力や中空での出力がしたいと思い挑戦しました。しかし、いざ出力してみるとなかなか上手くいかず失敗続き……。そこからはレジンのパラメータ設定や出力の際の剥離や出力時のパーツの向きなどひたすら試行錯誤を繰り返し、やっと思い通りの出力ができるようになっていきました。

3Dプリンタを上手く使いこなせるようになるまでは大変でしたが、今はデジタル造形と3Dプリンタを使っていて本当に良かったなと思います。

●フィギュアやガレージキットでの3Dプリンタの強み

3Dプリンタの強みなんといってもサイズが自由に変更できる、かつ手軽に量産できることだと思います。3Dプリンタの進化と普及のおかげでガレージキット業界でも出力品キットがかなり増えました。これまでのシリコン型を作りレジンキャストを流すといった方法では量産できなかったようなパーツも、3Dプリンタなら高精度で難なく量産できるというのが魅力だと思います。


邪龍の胸像をそれぞれ全高30cm、全高12cmで出力。(クリックで拡大)

●現在の3Dプリンタの活用方法

現在は商業、趣味ともにデジタルでの原型製作、出力後にアナログにて細部の造形や調整 といった流れで原型を製作しています。

ZBrushで深くディテールを彫ったつもりでも、いざ出力してみると思ったよりディテールが浅かったと思うことも多々あります。また、モンスターを造形する際はアナログの少し荒削りな質感があると、デジタルとアナログとの造形のコントラストでより迫力が出ると考えているので、原型出力後はリューターや超音波カッターなどを使用し、鱗や皮膚のわずかな傷やテクスチャをさらに彫り込むなどをして仕上げています。


削って白くなっている部分が、アナログ作業でディテールを追加した部分。(クリックで拡大)

表面処理で真鍮ブラシやスチールワイヤーブラシを使い、表面を少しザラザラに加工 。(クリックで拡大)

●3Dプリンタの今後に期待すること

ここ数年で3Dプリンタがどんどん進化して、より高精度かつ出力スピードも速い機種が増えてきました。数年前2K、4Kのプリンタが登場したと思ったら今では12Kまで進化しているので、新機種が出る度に「この短期間でどこまで進化するんだ?!」と驚くばかりです。
今は光造形だと数cmの出力に数時間かかりますが、いつかは出力ボタンを押したら数分であっという間に出力が完了しているようになる未来が来るのかなぁと思っています。

デジタル造形を始め、3Dプリンタを導入することで自分の「作りたい!」をより手軽に叶えることができるようになりました。これから先の未来も3Dプリンタがさらに進化していくのを楽しみに、日々造形活動を続けていきます。



3Dプリント出力作品「アルディウス」(2023年制作)。(クリックで拡大)





次回の執筆者は原子和臣さんの予定です。
(2024
年1月10日更新)

 

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