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3Dプリンタの明日を妄想する

本コラムでは3Dプリンタに関係する業界のオピニオンリーダーに、3Dプリンタの現在、未来を語っていただく。明日は誰にも分からない。だからこそ、夢や妄想が明日を創る原動力になる。毎回、次の著者をご指名していただくリレーコラムなので、さまざまな視点での3Dプリンタの妄想をお楽しみください。

 

 
 

Imagination for 3D Printer

第68
アナログ造形、デジタル造形
どちらも必要

チビタンク/キャラクターモデラー

陸上自衛隊任期満了後、大阪芸術大学に進学。在学中に特殊メイク、特殊造形に出会い卒業後は某特撮番組や映画などの特殊造形に参加する。その後ゲーム会社へ転職しキャラクターモデラーとしてAAAタイトルに参加する。現在はゲームCGの専門学校でデジタルスカルプトの講師をしています。
X(Twitter):@tibitan9



 

●3Dプリンタとの出会い

大学生の時から立体造形が好きで、特殊メイクのサークルに入ってクリーチャーばかり作っていました。先輩からの紹介もあり、ハリウッドで活躍されている特殊メイクアーティストの元に彫刻の勉強に短期留学もしました。その時ハリウッドの工房で彫刻はデジタルに移行しつつあることを知り驚愕しました。しかし日本とは予算の規模も違うので、日本ではまだまだアナログがメインなんだろうと思い、ひたすらに粘土をこねていました。

卒業後は特撮ヒーローや怪人を製作する造形会社に入りました。案の定アナログの作業しかなく、ひたすらに着ぐるみを作り続けていました。着ぐるみ造形の作り方はウレタンやウレタンボードなどを直につけていく製法が多く、なかなか仕事で粘土を使うこともなかったので、帰宅後にフィギュアなどを粘土原型で作っていました。

3Dプリンタと出会ったきっかけは、趣味で参加していたワンダーフェスティバルで、ゲーム会社に行った後輩の造形がデジタル原型だったことでした。すごい細かいところまで作られていて、素直にデジタルすげーってなりました。造形は小さくなればなるほど難しくなりますが、デジタルだと出力サイズを小さくすればよいだけですから。

その頃、家庭で買えるくらいの3Dプリンタが出てきて、これはもうデジタルやらないと置いていかれるなと思いました。その後ZBrushを独学し、ゲームCGの道に行くわけですが、ここが一番しんどかった(笑)


大学生期間に制作した彫刻作品物。(クリックで拡大)

大学生期間に制作した特殊メイク。(クリックで拡大)

●3Dプリンタ導入のメリット・デメリット

メリットは、やはり精密で細かい物が出力できるところです。それと、僕が仕事に行っている間も休まず動いてくれていて、帰宅したらできているところです。1日で2つの仕事をしている感じで効率がすごくいいです。

また原型のチェックの時もデータなら修正が楽です。粘土ではないので部屋が汚れないし、粘土の匂いがないのもいいですね。ただUVレジンはそこはかとなく匂いがあるし、身体に良くないので注意が必要です。

デメリットは、そもそもデジタルで原型を作れないと、ただの箱というところです。これまでアナログ造形しかしていなかったので3Dプリンタを導入したくても、そもそもデジタル原型が作れないことに気付き、いろいろな人に聞いたり調べたり、後は毎日作業していきました。そのうち、なんとかZBrushでの造形がアナログ造形くらいのレベルになってきたので、最初の導入時が一番苦労しました。


学生時代にデザインしたキャラをZBrushで作り直して3Dプリンタでフィギュア化。(クリックで拡大)


●アナログ造形とデジタル造形

昨今ではデジタル造形が増えてきていますが、3Dプリンタがで始めた頃は、デジタル造形は楽しているなどと言ってくる人が多くいました。また逆に最近では、アナログ造形もデジタルですれば効率いいのに、とか言っている人も増えてきています。

しかしアナログ造形、デジタル造形のどちらも行ってきた僕には両方必要で、両方できるに越したことはないと思います。例えば3Dプリンタの出力物と複製物とでは型取りのための分割を変える必要があります。アナログ造形で型取りなどをしていなければこういう細かいところに気づけないのです。他にも出力した物の表面処理など、結局最後はアナログ作業になってきます。

ビジュアル面でいえば、画面で見ている立体感と出力物とではやはり立体感が少し違ってきますので、自分が求める立体感をつかむのに粘土造形なども必要な知識かなと思います。なのでアナログ、デジタルどちらかに偏りすぎると思わぬところで手こずることになるので、両方するのがお勧めです。

3Dプリンタ製フィギュア。(クリックで拡大)

●今後の3Dプリンタに期待すること

3Dプリンタ自体はここ数年で出力スピード、解像度、大きさなど目まぐるしい進化をしてきました。なので次に期待したいのは、レジンの質の向上です。レジンが出た当初と比べると、数も品質もかなり上がりましたが、まだまだ信頼できないのが現状です。たぶん出力物販売より複製品の方が好まれる要因は、UVレジンの不安定による差だと思います。ここさえクリアできたら、もっと出力物販売が増えて3Dプリンタを利用する人たちが増えると思います。

また、捨てるしかないサポートがもったいないので、もう一度液体に戻せるようにできたら無駄がなくなるかと思います。他にも積層痕が出ないプリンタ、フルカラープリンタの質感、サポート跡など、まだまだ伸びしろのあるコンテンツだと思いますので。

後はやはりいろんな分野への導入や発展です。私は現在ゲームCGを教えていますが、多くの学生はCG=ゲームといった考えが多いです。しかし3Dプリンタなどがあれば、CGスキルを生かしてデジタル原型師などの選択も増えます。なのでいろいろな分野で3Dプリンタの導入が増えると、就職の選択肢の幅が増えていくと思います。

また、人体に無害なレジンなら人工臓器が作れたり、宇宙など資材を持っていけないところで出力して組み立てるとか夢は広がるばかりです。いろいろなことに挑戦し、まだ誰もたどり着いていない世界を築いていくのはやはり人の想像力だと思いますので、自分自身も広い視野を持って活動していければと思っています。



次回の執筆者はカズマタイキさんの予定です。
(2024
年5月10日更新)

 

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