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3Dプリンタの明日を妄想する

本コラムでは3Dプリンタに関係する業界のオピニオンリーダーに、3Dプリンタの現在、未来を語っていただく。明日は誰にも分からない。だからこそ、夢や妄想が明日を創る原動力になる。毎回、次の著者をご指名していただくリレーコラムなので、さまざまな視点での3Dプリンタの妄想をお楽しみください。

 

 
 

Imagination for 3D Printer

第70
3Dプリンタで
ガレージキット作り

ナカシー/モデラー

東京造形大学インダストリアルデザイン科卒。原型制作会社で商業用3D原型師として勤務。2022年からはオリジナルデフォルメフィギュアなどの制作、販売も始めました。使用しているソフトは「ZBrush」。おもちゃが好きで、海外のアクションフィギュアなどを集めています。
X(Twitter):@nakasshi



 

はじめまして! 普段は小さめのフィギュアの商業原型師をしているナカシーと申します。今回カズマタイキ様からバトンを受け取りまして、記事を執筆させていただきました。よろしくお願いいたします!

●3Dソフトや3Dプリンタとの出会い

本格的に3Dソフトを始めたのは、社会人になり、ほぼ未経験の状態からフィギュア原型の仕事を始めてからでした。今まで粘土で本格的な造形などをしたことがあまりなかったので、Zbrushの機能を覚えながら形の取り方も勉強していくのが大変でしたが、同時にとても楽しかった記憶があります。

最初に入社した会社では、原形出力を外注で出していたので3Dプリンタ自体に触れる機会があまりなかったのですが、2021年に転職してからは本格的に光造形機を自分で操作することになりました。

出力の設定やレジンの種類によって、強度や精度の変化の差が激しいこと、そして家庭用のものであれば比較的安価に手に入れられることに驚きました。今現在もさまざまなレジンにあった設定を模索しながら仕事や制作に励んでいます


「アンモナイト」。騎士(ナイト)とアンモナイトをかけたオリジナルキャラクター。ガレージキットと彩色済み完成品をイベントなどで販売しています。(クリックで拡大)

アンモナイトのキット。塗分けがしやすいように、目のパーツなども分解しています。接着剤がなくても組み立てが可能です。(クリックで拡大)


「エリートアンモナイト」。アンモナイトシリーズの他バージョン(1)です。(クリックで拡大)

「ジェネラルアンモナイト」。アンモナイトシリーズの他バージョン(2)です。(クリックで拡大)

●趣味で制作しているガレージキットについて

私はデザインフェスタやワンダーフェスティバルなどで、オリジナルキャラクターのガレージキットを制作して販売しています。それらはすべて3D出力によって量産化しています(キャスト複製ではなく、レジン出力品をそのままキットにしています)。

メインで販売をしている「アンモナイト」シリーズですが、パーツが10パーツ前後あります。これらのパーツをできるだけ磨きや勘合部分の調整をせずにお客様に組み立ててもらうために、レジンの種類によって出力の露光時間やサポートの位置など設定をしっかり調整して出力しています。

これらの違いで、太り具合が変わる箇所が出てきてしまうので、組み立てにくさに影響してしまうのです。毎回新しいキットを販売する際は、出力品を何も手を加えずに組んでみて、初心者の人でも作りやすいかなどの検証もしています。

デジタル原型が増えてきている今だからこそ、ガレージキットというものをできるだけ敷居の低いものにして、意外と簡単に楽しむことができるものだと普及させていきたいです。


●ELEGOO Saturnシリーズを使った出力

私は主にELEGOOのSaturnシリーズを使用して出力をしています。最初のSaturnからSaturn2、そして昨年発売された機種のSaturn3 Ultraまで使ってきましたが、わずか数年であるにもかかわらず、出力スピードがどんどん速くなっていることに驚きました。印刷サイズもボリューミーでとても良いです。

この前発売されたばかりのSaturn4では、自動でキャリブレーションをしてくれる機能や、レジン残量を検知してくれたりと、より初心者でも使いやすい機能と設計になってくれるみたいで楽しみですね。スピードもどれだけ早くなるか期待大です!

●今後に期待していること


3Dプリンタは毎年進化していて、年々驚かされることばかりですが、今後もさまざまなことがアップデートされたらいいなと願っています。

過去の記事で他の皆様もおっしゃっていましたが、サポートを付けた個所がどうしても太ってしまうので、ここができるだけ軽減していけたらいいなぁと思っています。最終的にサポートなどを一切つけずに出力が可能になれば最高ですね(笑)。

あとは材料の話になってしまいますが、精度の高くて比較的安価なカラーレジンがたくさん普及してほしいです。それが実現したら、色塗りせずに組み立てするだけで完成するガレージキットなどをたくさん作ってみたいですね。

これからもさまざまなレジンの特性や出力の設定を勉強して、精度が高く安全な出力品をたくさん作っていきたいです。最後までお読みいただきありがとうございました。



「アノマロカリス」。今年のワンフェスから販売を開始したアンモナイトシリーズを乗せることのできる新しいキットです。鰭のパーツはすべて分割しており、全30パーツの構成になっています。(クリックで拡大)

「アゴハズレックス」。アンモナイトシリーズとは別で展開しているオリジナル古生物です。アゴが外れたティラノサウルスの仲間です。(クリックで拡大)




次回の執筆者はmonyuraさんの予定です。
(2024
年7月9日更新)

 

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