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3Dプリンタの明日を妄想する

本コラムでは3Dプリンタに関係する業界のオピニオンリーダーに、3Dプリンタの現在、未来を語っていただく。明日は誰にも分からない。だからこそ、夢や妄想が明日を創る原動力になる。毎回、次の著者をご指名していただくリレーコラムなので、さまざまな視点での3Dプリンタの妄想をお楽しみください。

 

 
 

Imagination for 3D Printer

第73
好きなものを作る楽しさを出力する箱(ただし魔法の箱ではない)

ドロボッチ/モデラー

ドロボッチ工房というディーラー名で活動中。3Dプリンタで1/12サイズの美少女プラモデルキットをカスタマイズするための武器や武装、ゲームキャラクターを製作し、boothにて販売しております。プラモとフィギュアとVTuberが好き。使用ソフト:Fusion 360、使用プリンタ:ELEGOO Saturn3 ULTRA。
X(Twitter):@Gandamfullmuc




 

●ご挨拶

お初にお目にかかります、ドロボッチ工房というディーラー名で活動をしておりますドロボッチと申します。普段はプラモやフィギュアなどの武器作りや、ワンダーフェスティバルなどのガレージキットイベントで版権キャラクターを少しだけ制作し販売しています。このようなコラムは初めてで拙い文章ではありますが、ご一読いただければ幸いです。

●デジタル導入のきっかけ
-おもちゃ好きの人間が「ガレージキットディーラー」になるために-

おもちゃとプラモが好きだから作る側になりたい! という気持ちだけで入っていったディーラー活動の最初は、プラバン積層やポリパテなどで作っていました。ただこの方法ではアナログの腕前が未熟すぎる自分には厳しいなと悩んでいました。

そんなある時、Fusion 360という個人などであれば無償で使えるCADソフトが、当時仕事で使用していたSOLIDWORKSと使い心地が似ているという情報を知り「これだ!」と思い導入。実際に使ってみてFusion 360は非常に手に馴染みました。ありがとうAutodesk、本当に。


Photonで最初に出力してから複製した1/12用武器「アクセルヘイト」。(クリックで拡大)

ネオジム磁石で中折れギミックを搭載した銃器「パスパルトゥー」。(クリックで拡大)

●外注から3Dプリンタを導入
-外注の煩わしさ<<全部自分でやるという苦労<<<生み出したかったものが生まれる楽しさ-

デジタル導入直後はDMMの外部出力サービスに頼っていました。ただ、サポートがあまりついて欲しくないところにつくことが多い点や手元に届くまでの時間、出力して初めて分かる嵌合や動かしたら面白いだろ! と作った可動部分のミスが出てくることもありました。そこで「もしかしてこれは自分で3Dプリンタを持ったほうが楽になることが多いのでは…?」と考えるようになり、当時ネットで話題となっていたPhotonを導入しました。

「やったぜ! ついに欲しいモノが手軽に手元で出せる! 魔法の箱やーー!!」……そんなわけはなかった。

レジンの性質による選定、サポートの配置と角度、歪む出力品、なんか洗うたびにひび割れていく生産物、出力される「無」、無惨に消費されるレジン。たしかに外注を待つ煩わしさは消えた、しかしそのかわりに「うまく出力する」ための勉強がめちゃくちゃに必要になったのです…これが…これがほんとうに…。

そういった3Dプリンタを扱うスキルを身に付けていくほど楽しいです。なにより長物でも半日くらい(当時のPhotonの出力時間)で手元に出てきてくれるので、本当に嬉しい。やりたいギミックや調整もCADのお陰で難なく調整できる、本当に良い。でもちょっと面倒くさい、楽しいけど。

なにより良いのは、想像したものが手元に生まれてきてくれるという実感が持てること。これは何度感じても良いものだと思います。特に「自分が好きだけど公式が出してないキャラを出力したとき」はすごいですね。この世界でそこにしかないものを作り出しているので楽しくて仕方ありません。


出力品だからこそできる外装が筒構造の火炎放射機「バーナーパイ」。(クリックで拡大)

オーソドックスだけど過去で一番気に入ってる刀「血忌(ケッキ)」。(クリックで拡大)


ネオジム磁石で回転、分離のギミックを搭載した三連回転鋸「火廻(ヒマワリ)」。(クリックで拡大)

●3Dプリンタに今後求めること

自分の使っているタイプのレジンプリンタはELEGOOの「Saturn 3 Ultra」で、これも性能自体はかなり良いものだと思っております。ですが積層痕とサポート処理に関してはどうしようもありません。これらに関しては構造や出力方法の問題なので、ここはもうちょっときれいになればな…という気持ちがあります。

個人的には細くて長いものを出すことが多いので、もっと簡単に「反らない形状に合わせたサポートの設定」などがオプションで選択できるようになるといいな…と思います。

●最後に

3Dプリンタは扱いが難しいものではあります。レジンはもとより、それを洗浄するための溶剤も危険物でもあり、アレルギーを発生してしまうようなものも多いです。ですがそれらは作業のための防具、換気などの使用環境が適切であれば恐れすぎるものではありません。

自分のように好きなものを作りたいという欲求を持っているのならば、これほど適した道具はないと思います。もちろんCADやソフトを使いこなす必要があるため、すぐにはできないと思いますが…もしやりたい気持ちがあるなら、それを封じ込めてしまうのはもったいないので、自分のように「とりあえずやってみよう!」で始めてみても良いと思います。そのためにも、もっと誰でも扱えるくらい簡単な3Dプリンタが増えることを願っています。





次回の執筆者はこるとさんの予定です。
(2024年10
月8日更新)

 

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