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3Dプリンタの明日を妄想する

本コラムでは3Dプリンタに関係する業界のオピニオンリーダーに、3Dプリンタの現在、未来を語っていただく。明日は誰にも分からない。だからこそ、夢や妄想が明日を創る原動力になる。毎回、次の著者をご指名していただくリレーコラムなので、さまざまな視点での3Dプリンタの妄想をお楽しみください。

 

 
 

Imagination for 3D Printer

第75
「未来」の到来の実感と
「今後」への期待

ロンシン/会社員兼ガレージキットディーラー

ディーラー名、龍真工房で活動中。6年前に趣味で始めた3Dプリンタとクリアレジンを使用して、オリジナルドールや1/1オリジナルアイテム、1/12美少女プラモデル改造キットなど、幅広く製作しています。座右の銘は「酔ったように生き、夢を見て死ぬ」。こちらは嘉言「小学」より「酔生夢死」の引用で、意味をはき違えていますが、毎日ものづくりのことだけを考えて、楽しく、夢を追い続けて生きたいと思っています。
X(Twitter):@FunkMonkey0119




 

はじめまして、龍真工房のロンシンと言います。会社員の傍らオリジナル作品の製作、頒布をしております。

●3Dプリンタとの出会い

既製品(と言われるクオリティ)のオリジナルメカモデルが作りたい! 6年前の私はそんな情熱を持ちながら、ネットの記事を見よう見まねで、パテをコネては未熟さ故に思うような形状が作れずゴミ箱へ…といった日々を繰り返していました。手原型でメカモデルのような左右対称のモデルを作るには自分の技術があまりにも不足していました。

そんな折、「友人から3D原型なら左右対称に作れて3Dプリンタならそれを出力できますよ」と勧められ、当時、国からの10万円給付金のタイミングも重なったことから思い切って、ANYCUBIC社の「Photon Zero」を購入したのが始まりです。


初めて出力した壽屋フレームアーキテクトのオリジナル外装。(クリックで拡大)

2年後にリモデリングしたオリジナル外装。(クリックで拡大)

●3Dプリンタの活用方法

当時はPCすら触ったことのなかった私ですが、我が家にあった古いPCにFusion360をインストールし、仕事から帰宅してPCの前に座り、毎晩3時、4時までモデリングをしていました。それ自体は苦ではなく、自分がモデリングしたものを、3Dプリンタで出力すれば、数時間待つだけで、手元に現実に存在することの嬉しさに、「未来」の到来を感じ、時間を忘れていたためです。

現在はモデリングツールとしてZBrushも使用するようになり、ELEGOO社の「Saturn 3 Ultra」2台を主力に、クリアレジンを使用して、透明感のあるオリジナルドールを制作しています。

3Dプリンタの普及により「僕自身が驚くようなレベルのものが、家庭で製作できるようになったのは、とても素晴らしいことだ」と感じています。3Dプリンタがなければ、今まで私が作った作品は、頭の中で思い描く空想に留まっていた…と思います。


現在の作業環境(Saturn 3 Ultra×2、Saturn2、Saturn8K、Saturnの計5台使用)。(クリックで拡大)

Saturn 2で出力した1/1オリジナルメカヘッド
。(クリックで拡大)



クリアレジンを使用したオリジナルドール「宝石海月-JewelryFish-」。(クリックで拡大)

●3Dプリンタの課題

いくつか思いつくことはありますが、まずはじめに選択肢が多すぎて、これから導入しようとしている初心者が何を選んでよいか分からず、導入ハードルが高い点が上げられるかと思います。

家庭環境や、コスト面、求める性能など、個人によってニーズはさまざまなので、それぞれに最適解はありますが、同時に確たる正解もないと感じています。これは3Dプリンタにおける永遠の課題ではないでしょうか。

また、最近ではアルコールレジンだけでなく、水洗いレジンも種類が増えてきていますが、
・素手で作業できない
・換気必須
・廃液の処理

など、家庭用3Dプリンタと言われているのにも関わらず、そのレジンが家庭で作業するには不向き、という点も、初心者にはハードルが高い点ではないでしょうか。これは3Dプリンタメーカーだけの話ではないので、レジンメーカーにも期待したいです。

最後にメンテナンス性の悪さが上げられます。性能も進歩してきたものの、
・フィルムの張替え作業
・LCDの交換

など、環境や場合によっては頻繁に行うこともある作業が、使い慣れていても億劫に感じてしまうほど、取り回しが悪いです。ワンタッチでフィルム交換ができるなど、造形面だけでなく、ユーザビリティの発展も期待したいです。

●「今後」の3Dプリンタへの夢、期待

私が製作しているものは、クリアレジンを使用した作品が多いため、積層痕やサポート痕の研磨作業に時間を取られることが大半です。 その点から、サポートが必要ない3Dプリンタができるといいな、と思っています。例えば、最近、ゲル状の液体の中で、ノズルが動いてプリントする3Dプリンタの開発中の動画を見ましたが、これをX、Y、Z方向からの、スクリーンのような形で透写して、より積層痕の少ない形でできたらどんなにいいだろう、と妄想しています。

最後に、自分の頭の中で思い描いたモデルが、3Dプリンタの普及によって、家庭で出力できるようになっただけでも、私にとって人生を左右するくらいの出来事だったと感じています。3Dプリンタがなかったら、この記事を書かせていただいている今の私は存在していません。

もっと、3Dプリンタの導入ハードルが下がって、家庭でクオリティの高い、しかも安心安全なものづくりができるという感動を、多くの人に体験してほしいです。



次回の執筆者は黒川祐介さんの予定です。
(2024年12
月5日更新)

 

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