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最新技術の鑑定術

本コラムでは、さまざまな最新テクノロジーがモノ作りや生活とどのように関わっていくのかを考察していきます。毎日のように出来立てのテクニカルタームが飛び交うビジネスシーンで、何が大切なのか? 皆さんが見極めていくヒントになれば幸いです。

 

 
 

New Technology Judgment

第10
3Dプリンタの材料を考える(2):「光造形用材料」

水野 操

米・Embry-Riddle航空大学修士課程修了。1990年代初頭から、CAD/CAE/PLMの業界に携わり、大手PLMベンダーや外資系コンサルティング会社で製造業の支援に従事。2004年に独立し、独自製品開発の他、3Dデータ、3Dプリンタを活用した事業支援などを行っている。著書に、『AI時代に生き残る仕事の新ルール』(青春新書インテリジェンス)など。
http://www.nikoladesign.co.jp/

 


今回も引き続き3Dプリンタの材料について考えていきたい。前回は、FDM(FFF)方式の材料の、特に定番であるABSについて述べた。今回は、昨今、同じようにデスクトップユースが増えてきた光造形方式の材料について考えてみたい。

●標準でも物性がメーカーごとに異なる光造形方式の材料

さて、光造形方式においても定番樹脂があることはFDM機同様だ。ただし、FDM機のように「ABS」とか「PLA」と、かなり具体的に断言はされずに、アクリル系とかエポキシ系のようなベースの材料で語れる。単に「スタンダード」とか「標準」樹脂という表記をされることも多い。当然ながら材料の中身の細かな配合は、メーカーごとに変わってくるので、スタンダードな樹脂とは言っても、その材料特性はやはりメーカーごとに異なってくる。具体的な機械特性などは各メーカーのデータシートなどを参照する必要がある。

ただ一つ言えることは、スタンダードな樹脂の場合、どちかと言うと靭性のない脆性材料であることが多い。つまり、粘りがないので砕けやすいということだ。例えば、スタンダードな樹脂でスマホケースなどを作ると、スマホをはめようとしてケースを少し曲げてはめようとすると、ケースは曲がらずにそのままパキッと割れてしまう。

ただし、造形性は一番安定しているので、実際の用途はともかく、そのプリンタで出力することに慣れようとする場合、スタンダードな樹脂を用いて、さまざまな形状、厚み、長さ、細かさをいろいろ出力してみるのがよい。また、スタンダードな樹脂は後加工における加工性も良いことが多いが、ヤスリで磨き、塗装をしていくプロセスを繰り返して慣れるのがよい。

もう1つ言えるのは、特に扱いの容易なFDMから光造形を初めて試したような時、扱いが面倒なことも共通する。そもそも、液体であること自体が面倒だが、それに加えてなんと言っても面倒なのが、人間にとってよろしくないToxic、すなわり毒性を持つ材料であるということだ。

具体的には、素手で材料が手についたりすると、手がかぶれたりなど皮膚に対するダメージが発生する場合がある。扱いにおける注意点はやはり各メーカーの材料のデータシートに書いてあるので、それもよく確認しておいたほうがよい。

毒性があるから、例えば余った材料や、洗浄時に材料が溶け込んだIPA(イソプロピルアルコール)などを下水に流してはいけない。余ってしまいもう使用しない樹脂は日光などに当てて完全に硬化させる。アルコールの場合には、箱などに新聞やボロ布などを詰めて、そこに材料の溶けたアルコールを染み込ませる。しばらく放置しておけばアルコールが飛ぶ。そうするとどちらの場合にも、あとは普通に燃えないゴミで捨てることができる。この手間が惜しい場合には、産廃業者に引き取ってもらうことはできるが、結構なコストがかかる場合もあるので、それほど大量でなければ上記の手順を踏むのがよいだろう。

もう1つ、光造形樹脂は特に光が豊富に存在する日常空間では光造形樹脂というだけあって、経時的な変化もFDMなどより大きいので注意が必要だ。


光造形タイプ3Dプリンタの人気機種となったFormlabsの「form2」。(クリックで拡大)
 


●魅力的な豊富な材料のバリエーション

光造形方式の、少なくとも筆者にとっての魅力は、標準樹脂以外の材料の豊富なバリエーションがあるということだ。

材料の配合を変えることで、さまざまな機械特性を実現することができるのが光造形方式の魅力だ。例えばForm2でも、タフレジン(ABSライク)、フレキシブルレジン(ゴムライク)、耐熱樹脂、耐久性レジン(PPライク)などがあるので、ちょっとした機能試作なども可能だ。キャスタブルレジンなどを使用すれば、ロストワックスなどのプロセスも実現できる。

メーカーによっては、樹脂の配合を少しずつ変えることによってゴムライク樹脂のゴムショア値を変化させることでさまざまな硬さのゴムライク材料を実現できるので、例えば内臓などの医療用模型もより現実に近いものを造形することが可能だ。
ただし、標準材料以上に出力後のアルコール洗浄や二次硬化にも気を使う必要がある。その3Dプリンタのメーカー自身が出している材料であれば、洗浄や二次硬化についての指示も出ているので、確認の上守ることが必要だ。守らなくても形状は問題なくできるが、樹脂の本来の性能を発揮できなくなったりする。

3Dプリンタによっては、メーカー純正以外の材料を使用することも可能だ。ただし、その場合には、硬化させる光の波長も含めその3Dプリンタとの相性が重要だ。思うように硬化しない場合もある。そのような場合には、少なくとも自分が使用している3Dプリンタを対象に開発されたサードパーティー製の材料を使用するのがよいだろう。

ここまでできれば、例えデスクトップ機であっても、作成できる造形物の幅は驚くほど広がる。ぜひ、自分なりの「新規材料」を使った3Dプリンティングに取り組んでみてはいかがだろうか?



Form2の材料が入ったレジンカートリッジ。(クリックで拡大)

Form2に取り付けられたレジンタンクとタンク上のフレキシブル樹脂。(クリックで拡大)



次回は3月中旬掲載予定です。
(2019年1月24日更新)


 

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