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最新技術の鑑定術

本コラムでは、さまざまな最新テクノロジーがモノ作りや生活とどのように関わっていくのかを考察していきます。毎日のように出来立てのテクニカルタームが飛び交うビジネスシーンで、何が大切なのか? 皆さんが見極めていくヒントになれば幸いです。

 

 
 

New Technology Judgment

第13
ソフト、ハードの最新版を使うことの重要性

水野 操

米・Embry-Riddle航空大学修士課程修了。1990年代初頭から、CAD/CAE/PLMの業界に携わり、大手PLMベンダーや外資系コンサルティング会社で製造業の支援に従事。2004年に独立し、独自製品開発の他、3Dデータ、3Dプリンタを活用した事業支援などを行っている。著書に、『AI時代に生き残る仕事の新ルール』(青春新書インテリジェンス)など。
http://www.nikoladesign.co.jp/

 


●最新版ソフトウェアの意味

前回に続いてテクノロジーへの投資について考えてみたい。前回はソフトウェアについて、特にいつもの自分の仕事から目鼻を変えることや、異なる分野とのコンビネーションについて触れた。 現在のモノ作りは、ソフトウェアとは切っても切れない。ソフトウェアの高機能化、さらには低価格化に伴う民主化によって、数世代前のソフトよりもできることが増えている。

ハードウェアのことに触れる前に、ソフトウェアのことももう1つ話しておきたい。それは、ソフトウェアを常に最新版にしておくことの重要性だ。「別にバージョンアップしなくても、今、仕事で困ってないし、ものはちゃんと作れているよ」という声があるのも認識しているし、筆者自身そう思うことはままある。

だが、これは結構危険なことだ。昨今のソフトの進歩は著しく、誤解を恐れずに言えば、古い道具を使う経験者よりも、最新の道具を使う初心者のほうができることが多かった、ということもありえる。

3D CADにせよ、3D CGにせよ、あるいはそれらの関連分野のソフトにせよ、バージョンが1つ上がったからと言って劇的に機能が増えるわけではないのは確かだ。かつて、3D CADが大企業を中心に普及し始めていた頃は、バージョンが上がるごとに目立つ新機能とか、飛び道具的なものが実装されることもあり、
バージョンアップのメリットを今よりも感じやすかったと思う。

しかし、現在は基本的には細かな機能の充実が中心で、言ってみれば「玄人受けする」機能が中心だ。
とはいえ、一方で企業買収は日常茶飯事であるため、買収された側のソフトの機能が、買収の数年後には買収した側のソフトに組み込まれたり、最低限連携できるようになっていることも多い。

話が長くなったがいずれにしても、今は今なりにバージョンアップに伴って、ソフトの機能強化はなされているのだ。ということで、毎バージョンアップが自分の仕事の役に立つかどうかは別として、バージョンアップを続けるメリットはあるのだ。

●カスタマイズの功罪

バージョンアップの意思があっても、それが実現できない状況もある。それは必ずしもお金の問題だけではない(より広い意味で言えば、お金の問題でもあるのだが)。

その最大の理由の1つが「カストマイズ」だ。CADだけでなく、例えばERPなどのエンタープライズビジネスの分野においても、日本ではカスタマイズということが頻繁に行われていた。それもちょっとしたカスタマイズではなく、かなり本格的な作り込みだ。

実は、バージョンアップを考えた時、凝ったカスタマイズはバージョンアップを阻害する現況になりうる。筆者も、CADベンダーで仕事をしていた時、このようなことにしばしば遭遇した。

そうこうするうちに、使用しているバージョンのWindowsのサポートが終了する。そして、現在使用しているソフトでは新バージョンのWindowsに対応していない。なのでソフトをバージョンアップしようと思ったら、カスタマイズが対応しないので、作り直さないといけない。それにまた莫大なコストがかかる、などのことが起きてにっちもさっちもいかないなどが理由だ。

ソフトウェアの機能の進歩は、むしろこれから加速することも考えられる。そのことを踏まえて、道具の変化のスピードに私たちもついていく必要がある。なにしろ、今やモノ作りはソフトとは切っても切り離せないのだから。

コストの問題を別にすると、バージョンアップできないハードルはやはり、前述のカスタマイズ問題が大きいと思う。その問題を避けようと思えば対策は「靴に足を合わせろ」だ。ツールに合わせて自分たちのやり方を作っていくのが結局は、世の中の進歩にも合わせやすい。

●ハードウェアの更新

もう1つ、大事なのはハードウェアの更新だ。パソコンをリースしているのであれば、どちらにしても定期的にハードウェアも更新していくことになると思うが、それとは別にハードウェアも、どんなに遅くても税務的な減価償却が終わるタイミングで考えたい。

というのも、ちょっと前までハイエンドのソフトとハードの組み合わせでしか実現できなかったようなことも今後実現できる可能性がある。例えば、構造解析の分野だ。構造解析も、少し大規模になればマルチコア、マルチCPUをフルに活用して、32分割などの計算も身近などころに手が届くようになってきた。筆者が最近経験したことでも、それまで2分割で計算していた流体解析で20時間以上かかっていたものが、32分割にしたら3時間程度で終わってしまった。


●劇的に作業効率が変わる

また、最近、GPUをフルに活用するソフトのトライアルをしてみた。解析も昔からGPGPU(General Purpose computing on GPU:GPUによる汎用計算)などを使って大規模計算を高速に行うなどのことは行われていた。

ところが、最近では設計者CAE分野においても、GPUを活用して高速計算ができるようになってきている。そのスピードの違いに筆者も驚いた。ただ、そのようなテクノロジーのメリットを享受するには、ソフトだけでなく、ハードウェアも更新し続ける必要があるのだ。

実にお金のかかる時代である。でも、ソフトもハードも導入コストが下がっているのも確かだ。モノ作りに携わるものとして、このあたりを割り切るマインドセットが必要かもしれない。


高性能のGPUを搭載したAnsys Disovery Liveで強度計算した飛行機。短時間の間にさまざまな荷重ケースの検討が可能。(クリックで拡大)

同じくDiscovery Liveで行ったトポロジー最適化の例。他の環境で10分以上かかった計算が、2分弱で可能に。(クリックで拡大)



次回は6月中旬掲載予定です。
(2019年5
月20日更新)

 

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