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最新技術の鑑定術

本コラムでは、さまざまな最新テクノロジーがモノ作りや生活とどのように関わっていくのかを考察していきます。毎日のように出来立てのテクニカルタームが飛び交うビジネスシーンで、何が大切なのか? 皆さんが見極めていくヒントになれば幸いです。

 

 
 

New Technology Judgment

第18
デザイナーとCAE

水野 操

米・Embry-Riddle航空大学修士課程修了。1990年代初頭から、CAD/CAE/PLMの業界に携わり、大手PLMベンダーや外資系コンサルティング会社で製造業の支援に従事。2004年に独立し、独自製品開発の他、3Dデータ、3Dプリンタを活用した事業支援などを行っている。著書に、『AI時代に生き残る仕事の新ルール』(青春新書インテリジェンス)など。
http://www.nikoladesign.co.jp/

 

今回は、久しぶりにソフトウェアに話を戻してみたい。特にその中でもシミュレーションについてお話をしたい。

「設計者CAE」という言葉で、構造解析が3D CADでのモデリングプロセスの延長として活用できるようになって久しい。とはいえ、その導入が順調だったかというと必ずしもそうではなかったりする。そもそもCAEの機能がついていない3D CADも多く、もっと言えば、そもそもCAEがなくてもすでに開発できている、という意見もある。さらに、3D CADに付属でついているCAEの場合、機能が限定されていて、そもそもものによっては手計算でもできてしまう、という場合も少なくない。さりとて、より本格的な機能が実装されたものになると、それだけでコストがかさんでしまうことも多い。

とはいえ、Fusion 360のように初期投資をそれほどかけずに、ある程度本格的な解析機能を実装したパッケージもある。これらのソフトにはジェネレーティブデザインなどの条件を与えて形状を生成する機能も実装されてきていることから、機械設計者だけでなく意匠から手掛ける工業デザイナーもCAEを活用するケースも出てきている。その一方で、使ってはみたいけれども、どこから始めたらよいか、よく分からないというケースもあるだろう。そこで、何から始めたらよいのか…というところから話をしてみたい。

●CAEを使う上での基礎知識

いわゆる設計者CAEレベルで簡単な強度計算をするということであれば、ソフトウェアの操作という観点では、3D CADで形状を作るよりもはるかに簡単で手順も少ない。強度は、与えられた形状と与えられた荷重条件をはじめとした各種条件に基づいて、変形や物体内部の応力といったものが計算される。つまり、誤った条件を入力すれば、そのとおりに計算結果が求められる。これは単に間違って思っていた条件と違うものを入れてしまった、ということではない。実際に使用される部品などの本来の条件を、きちんと数値計算のための条件に適切に置き換えられているのか、ということもある。

さらに、得られた計算結果をどのように解釈するのか、さらにその解釈をどのように現在の線形に反映させるのか、という知識も必要だ。これらを行うための基本的な知識がないと、せっかくの解析結果をうまく使いこなすことができない。ということで何を学べばよいのだろうか。

●材料力学の知識

材料力学では、与えられた条件の時に、物体がどのようにどのくらい変形をするのか、どのくらい物体の内部に力が発生しているのか、などを知ることができる。さらにここから、どの程度の荷重がかかると壊れてしまうのか、ということを知ることができる。この知識があることで、解析結果がそもそも妥当なのか、その上で、自分の現在の設計は使用条件下において妥当なのか、ということを検証することができるのだ。

機械工学などを学んだ人であれば、材料力学はすでに学んでいるはずなので、思い出してもらえればよい。自分は専門が違うので、まったく分からないという人も心配しなくてよい。初歩的な解析については、もっとも基礎的なことさえ知っていれば、解析の第一歩を進めることができる。

●有限要素法の知識

多くの構造解析ソフトは、有限要素法と呼ばれる数値解析の手法を用いてプログラムが組まれている。通常、ユーザーとしては、その詳細について知る必要はない。ただ、解析をするためのモデル作成時に、この手法の特徴を知っていることで、効率よく精度の高い解析をすることができるのだ。逆に不用意にモデルを作成してしまうと、精度の悪い結果になる。それに気が付かないと、不正確な情報を元に設計の判断をしてしまうことも考えられる。それゆえに、有限要素法に基づいたプログラムの挙動の特徴を知っておくことが求められるのだ。

例えば、以下に示すのは、要素と呼ばれる解析の領域の単位が細かいか粗いか、またその要素自体の違いによって、物体の発生する内力の違いを示している。細かいことは次回以降でお話するが、同じ形状を扱っているのに、答えがまるっきり違うということだ。現実の答えにあっているのは、図2のほうだが、例えば何も考えずに図1の情報を元に設計をしてしまえば、想定外に低い荷重で壊れてしまうものができてしまう。


図1:一次要素の粗いメッシュ 最大の応力が約561MPa。(クリックで拡大)

図2:二次要素の細かいメッシュ 最大の応力が約1062MPa。(クリックで拡大)

●CAEソフトウェアの設定方法

解析モデルには必ず備わっていなければならない情報がある。それらがないとエラーとなって解析ができなくなる。スムーズな解析には、解析モデルの作成から実行、そして解析結果の表示方法、ひいてはモデルへのフィードバックの流れをきちんと把握しておくことが必要だ。これ自体は別に難しいことはないが、体系的に把握しておくことで無理のない解析を進めることができる。次回は、これらについて、1つずつ説明していこうと思う。


次回は11月中旬掲載予定です。
(2019年10
月18日更新)

 

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